日本vsスペイン[FIFAワールドカップカタール2022グループステージ第3節] 歴史的大勝利から見る両国における“サッカー”
シーズン途中の11月開幕という異例のFIFAワールドカップ2022カタール
そのスポーツの祭典を日本は注目度が低いまま開幕を迎えた。
初戦のオマーン戦は終盤の失点での黒星スタート
終盤の6連勝で出場を決めたものの采配、人選に疑問が残り、毎試合ごとに“森保解任”がトレンド入り、
本大会グループステージでは優勝経験国であるドイツ、スペインで同組
地上波の放送は放映権の高騰により地上波での放送は最終予選のアウェイ戦どころか本大会も一部の試合しか放送権がない状態、
そんな前評判を覆すドイツ戦の歴史的大勝利で国民の注目を集めるもミスがらみの失点で不覚をとったコスタリカ戦。
そんななか迎えたグループステージ突破をかけたスペイン戦のピッチ上の現象を分析すると、技術、フィジカル、メンタルだけでなくお互いのサッカー文化が見えてくる
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前提
日本 スペイン
vsドイツ 2-1 ○ vsコスタリカ 7-0 ○
vsコスタリカ 0-1 ● vsドイツ 1-1 △
勝ち点 3 2位 勝ち点4 1位
日本は負ければ敗退
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スタメン
日本
・遠藤、冨安 コンディション不良
前半
・予想通りの展開
スペインは主軸としているプラン(ボール保持)を遂行
→日本はボール保持を放棄 541ブロックを形成
スペイン
・SBを高い位置に上げずに日本の前3枚に対して4枚の供給源を確保
・左ユニットは時計回りに旋回
・sidetosideの循環で押し込み素早いカウンタープレスで主導権を掌握
日本
・優先的にブスケツを抑えるためCBの運びに牽制をかけれず後退
→30分あたりから田中もCBもプレッシャーラインにカバーシャドウ
・日本は各々のポジションで相手の侵入を弾き返す縦切り
・“共通理解”の欠如
日本は全員が縦切りで連動したプレスはなし
ハイプレスでブスケツのミスを誘発した際も前田の裏抜けが不発に終わった流れから→明確なプレッシングトリガーはなし
ポジティブトランジション時も同様、 ボールを奪った後前田は難易度も低く空いているSB裏に走るのではなく、CBと駆け引き、裏へのロングボールが蹴れなかったときのCBの開きながら落ちることによるスペースクリエイトもなくそのまま狭いスペースでパス交換をしボールロスト
チャンネルランをしたペドリへの対応が出来ずクロスから失点
→ニアゾーンをとる選手に対しての対応が曖昧
(スペインはWGがボールを持った時のチャンネルランが自動化されていることによって保持が安定しているチームであるにも関わらず…)
特にプレス局面、ポジティブトランジション局面での意思決定に明確な基準がないもしくは詳細がない様に見えた。
後半
・重心、比重を変える修正
前半0-1を受けて541リトリートから人意識のプレッシングへ変更
(ドイツ戦同様、リトリート、プレスの比重、プレーエリアの高さの再設定)
→GKへのバックパスをきっかけにハイプレス伊東がマークを捨てての縦スライドから同点弾
攻めあぐねるスペイン
・逆転後、541ブロックを再形成
対策
・5レーンアタック継続
・アンスファティ投入 斜めのランで深さを取りに行く
・ジョルディアルバ投入 左ユニットを時計回りに一つ旋回で固定
対応
・サイドでの1vs1で突破させない(三笘vsフェラン)
・ライン間で受けた選手を浮かせない
総括
劇的勝利だが楽観視出来ない日本の課題
ここまで見てきたように下馬評を覆しての逆転勝利になったわけだが試合を通して、組織的に、振る舞えていたわけではない
541のブロックの性質上崩されにくく、個々人の対人守備、スライドなどで集中力を見せ、逃げ切りに成功したが、チーム全体で統一されたプレスをしていたわけではないし、ニアゾーンをとる選手に対する対応、ポジティブトランジションでの狙いが共有されていないなど、原則がないため連携できていなかった部分もあり、実際に失点に繋がっている。
森保監督は「ヨーロッパで自分より良い監督に指導されている選手たちに教えることはない」と、選手たちの自主性を重んじているようだが、サッカーという意思決定のスポーツにおいて判断基準を統一しないことはまた別の話だと思う。
優勝経験国2カ国に勝利しグループ突破を決めたものの、4年間の準備期間で積み重ねが出来なかった事実に変わりはない。特に協会の人間には、にわかファンで盛り上がっている雰囲気に流されずに正当な評価をしてほしいものだ。